ダブルダッチのある生活 – vol.5 たけるさん
“うわっ、すげぇ!”から来る直感的な「衝動」を大切にしていきたい
JJRU岡山県支部委員でもあり、ダブルダッチサークル17期生の現役学生たけるさんは、今年度開催されたダブルダッチの大会「DoubleDutchDelightSouth2024一般部門」で優勝し、全国大会(DDDJ2024)出場を果たしました。幼い頃から始めたダンスを今も続けており、ダブルダッチパフォーマンスでは圧巻のダンススキルで会場を沸かせたたけるさん。ダンスやダブルダッチとの出会いでは、それぞれに衝撃的な第一印象があったようです。
自分の気持ちに素直に向き合ってきたたけるさんの、今を作るキッカケとなった「衝動」とは?
ダンスをはじめたキッカケは?
同世代のダンスパフォーマンスを観た衝撃で、ダンスを始めました。小学生の頃からダンスをしているのですが、元々はサッカーをやっていたんです。僕は五人兄弟の五男で、兄や姉は全員サッカーをしていたため、小学生となった僕も例外なくサッカーを始めたのですが、親の勧めで始めて、自分から始めたわけではなかったため、長くは続きませんでした。
その後、同じスポーツクラブのダンス教室が行う、ダンスパフォーマンスを観る機会がありました。その時に衝撃を受けました。「同世代の子たちって、こんな格好良いダンスをするんだ…!」と。まさに”うわっ、すげぇ!”となったことをハッキリと覚えています。サッカーを習っていた頃と同時期くらいに、母が通うダンス教室(ズンバや、エアロビクス)に付いて行っていたのですが、ダンスといえば、漠然とフィットネスのイメージがありました。そのイメージが、ストリートダンスで大きく塗り替えられた瞬間でした。姉がそのダンス教室に通っていたこともあり、僕もやってみたいという衝動から、ダンスを習い始めることにしたのです。
そこからはずっとダンスを続けてきたのでしょうか?
中学生になる直前まで、芸能事務所のテアトルアカデミーにも所属していました。母の知人が勝手にエントリーしたそうで、よくわからないまま選考会に行き、ダンスを踊って、歌も歌いました。元気よく、校歌を。気づけばアカデミー生となっていました(筆者:そんな某事務所みたいなことがあるんですね…)。ダンスや発声のレッスンを受けつつオーディションの選考に挑むこともありましたが、自分の意思で選択をしたわけではなかったため、特別興味もなく、中学校進学と同時に入る部活と天秤にかけて、部活を選択することにしました。小学生のときにサッカーをしていたということもあり、サッカー部を選びました。中学生のときの部活って、『辞めたら悪いヤツ』というような、そんなレッテルを貼られる空気感ってあるじゃないですか。それが怖くて、頑張ってサッカーを続けていましたね。そのため、中学生の頃は、自然とダンスから足が遠のいていました。
周りの環境の影響や流れで工業系の高校へ進学したのですが、高校卒業後就職するための技術を学ぶ授業が多くあり、大学へ進学したいという思いを持ち合わせていたため、勉強に必死になっていました。ダンスは中学から高校への間や、高校卒業前からまた再開するなど、休止と再開を断続的に繰り返していました。ただ毎回、再開するきっかけとなるのは、ダンスの先生のSNSの動画投稿を見て「やっぱり、凄いなぁ…」と心がワクワクし、ダンスレッスンに赴く。という、小さな衝撃を受けて行動に移すという流れが殆どでした。
ダブルダッチを始めるキッカケや大会などについて聞かせてください。
昔からダンスのジャンルはストリートダンスのHouseをメインに踊ってきました。大学入学が決まった時期に、何気なくInstagramの投稿を見ていた頃、HouseでダブルダッチをしているTATSUYAさん(チーム:Waffle)の投稿が目に留まったんです。今までにない衝撃を受けました。自分の好きなジャンルのダンスで、ダブルダッチをしているTATSUYAさんが凄く格好良くて。そこから自分の行く大学に、ダブルダッチサークルがあることを知り、ダブルダッチを始めることにしました。
今思えば懐かしい時世ですが、僕が大学に入学した当初はコロナ渦真っ只中で、新入生歓迎コンパは当然の事、サークルの先輩と食事に行くイベントもありませんでした。そのため、ダブルダッチの大会に初めて関わったのが大学2回生の頃でした。ただその時の大会は、結果的に欠場する形となってしまいました。自分達のデモの細かいところに拘り過ぎてスケジュールとの折り合いが合わなく、諦める形となったからなのですが、大会当日にサークルの同期がステージに立って頑張っている姿を見ると、自分が目の前のステージに立てれなかった悔しさがありました。翌年のDoubleDutchContestJapan2023(DDCJ2023)に同期と出場しましたが、その後は、自分の好きなダンスの方に注力していました。
今年のDoubleDutchDelightへの出場は、何か心境の変化があったのでしょうか。
実は今年、大学の履修について認識違いがあり、様々な方面に掛け合って奔走したのですが、結局、大学3回生をもう一度やることになってしまいました…。学問とその他の時間の両立はきちんと行っていたため、事実を受け止めはしたものの、当時はその悲劇に、しばらく打ちひしがれていました。ただ、ずっとへこんでいても状況は変わらないと思い、様々な人へ話をして、自分の置かれた状況を整理していくとともに、そこで大きな時間が出来たということも認識しました。同じ時間を過ごすなら、と思い切って大学のダンスサークルにも入ってみたんです。
ダンスサークルでは、HipHopに本格的に取り組んでみました。今までHouseメインのダンススタイルだったため、スタイルの違いに憧れもありました。何より、Instagramで物凄く深みのあるHipHopスタイルでダブルダッチをするjunyaさん(チーム:HARIBOW)の投稿を見た時に、「こんな凄い振り付けを、ダブルダッチで出来るの!?」という衝撃から、HipHopに興味が沸いたのも事実。そこからHipHopの楽しさにのめり込んでいるのですが、ふと、「このダンスの振り、ダブルダッチで出来るんじゃないかな」といったことが頻繁に頭に思い浮かぶようになりました。
とあるタイミングで、フリーロープ(主に個人が曲に合わせて自由に跳ぶダブルダッチの遊び方)に誘われたのですが、そこで今回の大会に出ないかと誘っていただいたことがキッカケで、今年の大会に出場する運びとなったのです。今まで培ってきたHouseのダンススキルではなく、新しく取り組み始めたHipHopのダンススキルをダブルダッチにぶつけてみる良い機会だと思い、挑戦することにしました(動画)。4年目にして大学生活初のDoubleDutchDelight出場です。
結果、ダンスやダブルダッチの環境がステップアップし、人間関係にも変化がありました。今思えば、この環境やご縁の巡りあわせは、もう一度大学3回生を経験する悲劇あってこそ。ジャンプするためのバウンドだったのかなと思います。
後輩たちに伝えたいことや今後について教えてください。
大会に出て、様々な気づきがありました。今まで考えたことのなかった、ステージ上での動きの詰め方。それ以外にも、同じ学生達が凄く熱くダブルダッチに取り組む姿勢など、出る前と後でダブルダッチに対しての興味の幅も広がりました。自分のダブルダッチの中でのダンスステップを突き詰めていくのはもちろんですが、今まで積極的ではなかったダブルダッチでの遊びや、各ダブルダッチイベントへの参加、子どもたちをダブルダッチで楽しませるなど、チャンスがあればいろんな形のダブルダッチに関わっていきたいです。
最近は今までよりも更に「自分の頭の中にあるダンスのイメージを、そのままダブルダッチに出したい」と、思うようになりました。ちゅーたさんの取材にもあったように、ダンスの基礎を突き詰めれば、表現の幅が凄く広がると思っています。技を覚えてアウトプットしていくことも大事ですが、例えばリズムの取り方を突き詰めていくといった基礎の徹底で、もっと動きに魅力が出て、ダブルダッチが楽しくなるのかなと考えています。今まで沢山インプットを重ねてきましたが、自分の知っている面白さを後輩たちにアウトプットしていく機会があるといいなと思います。アウトプットって楽しいですよね。
振り返ると今の自分は、その時々の感情に素直に向き合い、行動に起こすという「衝動」を大切にしてきました。直感的ですが、その一つ一つは自分の大事な選択です。今後も、”うわっ、すげぇ!”という感情を大切にして、色んなチャンスを掴んで行きたいです。
自分の抱く感情を大切にしなきゃと思える、素敵なお話を伺うことができました。自分のダンスをどうやってダブルダッチに落とし込むかを考え始めたら、もはや生粋のダブルダッチャーですね。そんなたけるさんから、よりステップアップしたい後輩さんたちへ、色んな武器を届けていただきたいので、近日JJRU岡山県支部でたけるさんを講師とした練習会を開きたいと思います。たけるさん、是非是非、よろしくお願いいたします。
ありがとうございました。(2024.11)
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