ダブルダッチのある生活 – vol.3 ちゅーたさん
僕が求める“かっこいい”
ダブルダッチサークルOBであり、社会人4年目のちゅーたさんは、去年開催されたダブルダッチ1on1バトルイベント「FOXTAIL」で優勝。現役学生の時にはダブルダッチの全国大会DoubleDutchDelightJAPAN2019オープン部門への出場経験もあります。現在もダブルダッチに積極的なちゅーたさんですが、自分のかっこいいと思えるダブルダッチスタイルを体現できるようになったのは社会人になってからだそうです。ジャンプスキルを高めたい、自分のスタイルを追い求めたいと思う方にも参考になるお話を伺ってきました。
ちゅーたさんが考える「かっこいい」ダブルダッチとは?
日常の中で「かっこいい」と感じる場面
「かっこいい」と感じる場面は色々ありますが、細かく拘っているような、揃っている動きに対して「かっこいい」と感じますね。一つ例を挙げると、現在小学校教諭として働いているのですが、「かっこいい」は、子供たちの全体行動からも見られます。全校集会や運動会の時に児童らを2列に整列させ歩かせますが、これを揃えて美しく行うことは、なかなか難しいんです。ただ息を合わせて歩くだけという行為ですが、数十人が足並みを揃え行進するのは、大人であっても容易にできることではありません。時間をかけ、努力の結果を感じる動きが見られると「かっこいいなぁ」と感じます。
ダブルダッチにおいても、細部の動きに拘るということはとても重要と考えています。手の動き一つとっても、力が抜けブラブラしてしまっていてはかっこよくありませんし、そのような動きを目にすると、細部まで時間をかけて練習できていないと感じ取れてしまいます。
「かっこいい」と思う感性のルーツは?
上記のルーツは「書」です。僕は小学2年生の頃から書道をやっています。長年嗜んでいる「書」は僕の人生の一部となっていまして、今でもふとしたタイミングで、リラックスするために字を書くことがあります。
そんな「書」ですが、こだわりがあります。それは「空気感」と、「筆の始まりと終わり」です。
「空気感」とは、字を書く時の周りの環境を指します。例えば、学校での書道の時間、教室でみんな一斉に字を書く時、隣の人の椅子を引く音や文鎮を外す音などによって、字を書こうとする教室の空気全体が簡単に崩れてしまいます。「書」の空間に居ることで、集中しているその空気感は、みんなで共有しているものとなります。
「筆の始まりと終わり」とは、その字の通り。その人の繊細さ、書の美しさが特に際立って現れます。始まりと終わり、どちらか一方のみ完璧であっても「書」は美しくありません。始まりと終わりがきれいな人ほど、その過程にも気を使え、美しい字を書くことができます。
筆の「始まり」と「終わり」のどちらか一方のみが完璧でも、全体を通して見ると完璧ではない、という考えは、「筆」以外にも、クラス全体で「書」に向き合う時の始まりと終わりの「空気感」という意味にも当てはまります。
「空気感」が統一され、どれほど細部にまで気を遣って書けたのか。美しい字からは、その過程と努力を明確に感じ取ることができるからこそ、僕はそれを「かっこいい」と思います。「かっこいい」への拘りのルーツはそこにあります。
ダブルダッチで「かっこいい」を体現するには?
ダブルダッチのジャンプにおいて、シンプルな動きで周りとの違いを出すことです。単純な動きだからこそ、静止したり滑らかさを出したりなど、質感の違いを明確に表現することできます。一つの動きでも表現の幅が広い人は、その動きをどれほど探求し努力してきたのかが分かります。だからこそ、同じ動きでも質感の違いを出せるダブルダッチプレイヤーを「かっこいい」と思います。
質感の違いを出したいのであれば、ダンス自体はできなくても、ダンスの基礎(アップやダウン、重心の移動など)はできたほうが良いです。ダンス経験者のほうが有利だという考えは好きではないですけど、ダブルダッチのジャンプが上手くなるためにダンスが全く不要だという考えは逃げだと思っています。ダンスの基礎があるからこそ、動きの一つ一つで、周りと質感の違いを出すことができます。
ダブルダッチのバトルイベント「FOXTAIL」でのワンムーブでは、ダンスの基礎的な動きであるアップとダウンをしてみました。その時の動画を見返したのですが、僕の動きに合わせて観客がリズムをとってくれていたんです(下記動画、画面左側)。シンプルな動きだからこそ、自分が感じている音を、観客にも共感してもらいやすいのではないかと思っています。ダンスの基礎を活用すれば同じムーブでも見せ方の幅を一気に広げることができますが、これを縄の中でやるのはなかなか難しいんです。
学生のときに心に響いた言葉とは?
「人生で人前に立って注目してもらえる機会なんてほとんどない」です。当時現役生の頃、OBとーるさんにチームを見ていただいていた時期があり、その中で一番記憶に残っている言葉ですね。僕のダブルダッチの軸は、「カッコイイ」にありますが、今までは漠然と「かっこよく振舞って、目立ちたい」と思っていました。ただ、この言葉を聞いてからは、人に注目される機会を貴重な時間だと気付き、漠然とした「目立ちたい」から、自信をもって「目立ちたい」と思えるようになりました。「目立ちたい」という気持ちに明確な理由を持っていなかった頃は「そう思っていていいのかな?」と不安でしたが、「人生あまり無い機会なんだし、カッコ良さを追求して目立たなくちゃ!」と気持ちが整理できたと思います。
仕事の話になりますが、小学校の運動会のタイミングが近づいた際、児童に緊張するか聞いてみたら、皆一斉に「緊張する!」と答えるんですよ。そこで「自分が頑張っている姿を、誰かに注目してもらえる機会はなかなか無いよ。特に小学校の運動会は人生で6回しか経験できないからね」と伝えると、みんな「なるほど…確かに!」と言うんです。「なんとなくの運動会」から「人生でたった数回の運動会」に切り替わる瞬間です。ダブルダッチサークルの後輩にも、「君たちのために見に来てくれる人たちがいるんだから、もっとワクワクしよう!」と伝えたりと、僕に気付きがあったからこそ、その大事さを僕の周りにも伝えています。それくらい、上記の言葉の影響は大きいです。
最近はダブルダッチのバトルにはまっていますが、バトルに魅力を感じるのも、「人前に立って注目してもらえる機会」という言葉が影響していますね。チームでのパフォーマンスは沢山のダブルダッチの魅力を伝えられるので好きですが、ソロバトルは、より自分だけに注目してもらえますから。
今後の展望は?
「FOXTAIL」では、優勝者が次回のジャッジ(選手のバトルを観戦し、優劣をつける審査員のこと)を務めることになっており、僕がその役を担います。 その時、僕にジャッジされる人たちが「ちゅーたさんにジャッジしてもらえるなら安心だ」と思ってもらえるように、より一層自分の価値を高めていく必要があります。なので、今後も自分の「かっこいい」と思えるダブルダッチを体現できるように精一杯頑張っていこうと思います!
ちゅーたさんの体現したい“かっこいい”ダブルダッチ像とその考えに至る背景を聞くことができ、これから自分のスタイルを探求していく方にも、参考になるお話でした。今後の活躍を心から期待しています。
ありがとうございました。(2024.02)
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